ラベリング理論とは?いじめや社会問題にも影響するラベリングの効果と具体例

心理学

「この世界は、ありとあらゆるものにラベルを貼ることで成り立っている」と言ったら大げさでしょうか。

目の前にある机や椅子も、スマホもPCも、近くにいるあの人も、「机」や「椅子」や「○○さん」という名前があるからそのものたり得るのです。

もしもそのラベルがなかったとしたら、私たちは「いろんな物を置ける4本足のついた板状の物体」「なんだか丁度いい高さで座れる木や石でできた物」というような漠然としたイメージでしかその物自体を捉えられなくなってしまいます。これでは、あらゆる物事を認識するのが難しいでしょう。

そして、「こういう物が机である」とラベリングすることで「机ではないもの」が生まれます。

ラベルを貼ることによって物事を定義する「ラベリング理論」。なんだか哲学的で難しく聞こえますが、様々な問題にも通ずる大事な観点だと思うので詳しく見ていきたいと思います。

ラベリング理論とは

社会学や心理学用語として用いられるラベリング理論は、1960年代に社会学者のハワード・ベッカーにより《逸脱行動》の理論として提唱されました。《逸脱》とは、行為者の内的要因ではなく、周囲がラベル(レッテル)を貼ることによって生み出される、というものです。

犯罪は、「この法律を犯すことは望ましくない逸脱行為だ」という決まりを作ることによって生まれます。そして、犯罪を犯した人に「犯罪者」というラベルを貼ることで彼らは犯罪者となります。

その後、周囲から「あいつは犯罪を犯した悪い奴だ」とレッテルと貼られることにより、精神的に追い込まれ、次の犯行を繰り返し常習化してしまう、という流れにつながることもあります。これを「ラベリング効果」と言います。

結果的に、その人はラベリング理論により犯罪者となり、ラベリング効果により犯罪者としての常習性を強めてしまったということです。

このように、逸脱行動は他者からの認知や評価によって作られると言えます。

ラベリングの具体例

世の中には、先ほどの犯罪者の例以外にも様々なラベリングが存在します。それが日常生活に影響し、問題を招いている場合もあります。ここでは、そんなラベリングの身近な例をいくつか紹介します。

具体例①:性格

あまり意識することはないかもしれませんが、人から与えられるラベルは自分の性格にも影響しています。

・「あなたは明るく元気な人だね」
・「あなたはいつもみんなに優しい人だね」
・「あなたって無口で暗い人だね」
・「あなたってマイペースな人だよね」
・「あなたはいつも怒ってて人に厳しいよね」

例えばこのような人の性格を言い表す発言。このような言葉を投げかけられた人は、そのラベルに合った行動をするようになります。

「優しい」と言われた人は、「自分は優しい人なのだ」と認識し、無意識のうちに人に対して優しい行動とります。また、「無口で暗い人」というラベルを貼られた場合、自発的に発言することや明るく振る舞うことが余計に難しくなってしまいます。

具体例②:能力

仕事や勉強の能力にもラベリング理論が影響します。

・「お前は仕事ができない」
・「あなたは要領が良くて仕事が早いね」
・「あなたは仕事が丁寧できちんとしているね」
・「きみはスポーツは得意だけど勉強は苦手なんだね」
・「きみは落ち着きがなく集中力のない子だ」
・「きみはやればできる子だね」

こういった人の能力に対する評価がありますが、こういうことを言われた人はラベリング効果の影響で、そのラベル通りの行動を強めてしまう傾向があります。

「仕事ができない」というレッテルを貼られれば、余計に自分の判断に自信を持てなくなり、スムーズに仕事がしにくくなります。

「勉強ができない」というレッテルを貼られた場合は、「自分は勉強ができない子」というイメージを持ってしまうため、余計に頑張る気を失ってしまいがちです。

このように、ラベリングにより「仕事ができる人・できない人」「頭のいい子・頭の悪い子」「得意・不得意」といったような個別のイメージが強化されることにつながります。

そのため、悩みの多い職場を辞めて転職したら、貼られていたレッテルがなくなり、仕事が上手くいくようになったという例も多く見られます。

ピグマリオン効果とゴーレム効果

ラベリング理論に関連する効果として、「ピグマリオン効果」と「ゴーレム効果」というものがあります。

これは、人間は期待された通りの成果を出す傾向があるという考えのもと、あらかじめ高い期待を示された人は期待通りの優れた結果を残し(ピグマリオン効果)、逆に期待されてない人は結果を残すことができない(ゴーレム効果)というものです。

「さすがだね」「才能あるね」というようなポジティブなラベルを用いた場合はピグマリオン効果に、「結局いつもダメだよね」というネガティブなラベルを用いた場合はゴーレム効果につながると言えます。このような例は、親子関係や教師と生徒といった教育の場面、恋愛関係において頻繁に見られます。

ラベリングによる問題

上記のように様々な働きをするラベリング理論ですが、それよって引き起こされる問題も多くあります。

いじめや差別などの社会問題

ラベリングは、エスカレートするといじめや差別などの社会問題にも発展します。

「あいつはダメな奴だ」というラベルをもとにみんながその人を攻撃し始めたらいじめになるし、「女は家事をするものだ」というラベルを社会全体が肯定してしていけば、女性は個人の事情や生き方関係なく家事をしなければいけなくなります。それが男女の平等性を欠く差別問題につながります。

性差別、人種差別、障がい者差別、LGBT差別など、あらゆる問題に様々なラベルが影響しています。

自己肯定感の欠如

人がラベリングによって作られた現実に苦しむことは少なくありません。いじめや差別までいかずとも、ラベリングが自己肯定感の欠如につながる場合も多いです。

幼少期から「お前はダメだ」と言われて育った子は、そのレッテルが自己暗示となり「自分はダメな人間なんだ」というセルフイメージを持つようになってしまいます。

「女の子は可愛いものだ」「男の子は強いものだ」というラベルが社会に浸透することで、「女の子は可愛くいなくてはいけない」「男の子は何があっても耐えなくてはいけない」と考えられ、そのラベルに自分が合わずに苦しんでしまうケースもあるでしょう。

ラベリングの上手な使い方

ラベリングにより無意識に人を傷つけることを避け、良好な人間関係を築くためには、人にラベルやレッテルを貼ることが与える影響を理解することが重要です。

ラベリング効果は、他者からの期待に沿うように自分自身を誘導してしまうので、ラベルの内容がポジティブかネガティブかに関わらず作用します。

ラベリングによる問題も多くある反面、上手く使うことで子どもやパートナーに気持ちよく頑張ってもらうことも可能になります。嘘を言う必要はありませんが、いいところはちゃんと褒めて認めてあげながら、期待感をポジティブに伝えて、いかに自分に自信を持てるイメージをさせてあげるかが腕の見せどころでしょう。

ラベリングにも関連するステレオタイプや偏見についての記事はこちら。

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